移動初日の歓迎会で記憶を失い朝目が覚めたら女嫌いで有名な先輩が隣で寝ていました
「リリィ、話があるから俺が風呂から上がるまで起きててくれる?」
「え、あ、はい……」
エイルとユリスが屋上で話をしてから数日後、ユリスの部屋で風呂上がりのリリィにユリスがそう言うと、リリィは戸惑いながら返事をした。
(ユリスさん、いつものように真顔だけどなんかちょっと神妙な面持ちだったな)
「お待たせ」
リリィが風呂上がりのユリスを待っていると、ユリスの声がした。気づいてユリスの方を向くと、風呂上がりだからだろうか、なんとなく独特の色気を感じてしまってリリィは言葉に詰まる。
(な、なんでだろう?ちょっと湿ってるから?いや風魔法で乾かしてるだろうし。でもなんでこんな色っぽいのこの人)
いつもユリスの風呂上がりの頃にはリリィは自分の部屋に戻っているので、ユリスの風呂上がりを見るのは初めてだ。きっとそのせいだとリリィは自分に言い聞かせた。
「あ、の、それで話って?」
「ん、二つほどある」
ユリスはリリィの隣に腰をかけながらそっとリリィを見つめる。その瞳には何か熱いものが秘められているようでリリィはどきりとする。
「リリィはまだキスできない?」
「はぃ?」
突然の質問にリリィは思わず変な声をあげてしまうが、ユリスは気にせずじっとリリィを見つめたままだ。
「あれからもう数週間経ってる。リリィの嫌がることはもちろんしたくない。けど、俺はそろそろ先に進みたい。だめ?」