移動初日の歓迎会で記憶を失い朝目が覚めたら女嫌いで有名な先輩が隣で寝ていました
(あーそんな顔で聞かないで!困る困る困る)

 リリィは困惑するが、ユリスは懇願するような顔でリリィを見つめたままだ。リリィは降参するように大きくため息をついた。

「嫌ではないんです。ただ、その」
「うん」
「先に進んだとして、後戻りできなくなったら困るんです。気持ちまで進んでしまったら後戻り出来なくなる。もう誰かのせいで傷つきたくないし、誰かのことを傷つけたくないんです」

 そう言って下を向くリリィの頬に、ユリスはそっと手を添えた。リリィはユリスの顔を見て戸惑う。

「前にも言ったけど、俺はそうなってくれて構わないし、むしろそうなって欲しいと思ってる。俺は多分もうあんたを本気で好きになってる。俺はもう戻ることはできないし、リリィにもそうなって欲しい」

 ユリスの言葉にリリィが両目を見開いて顔を赤らめると、ユリスは静かにリリィの唇に自分の唇を重ねる。今度こそリリィは拒否をしなかった。

 少しずつ少しずつ、優しく食はむようにユリスはリリィに口づけをした。何度も何度もそれを繰り返され、リリィはだんだん頭がぼうっとしてくる。

(キス、いつぶりだろ……元カレとは別れるだいぶ前からキスもしなくなってたし……)

 ユリスが唇を離すと、リリィはぼんやりした顔でユリスを見つめる。するとユリスは少しだけ目を細めてリリィを見つめ、またリリィに口づけをした。

 ユリスの口づけはどんどんエスカレートしてユリスの舌がリリィの口内に入り込む。そのままユリスの執拗なキスは続き、ユリスがまた唇を離した時にはリリィはすっかり蕩けてしまっていた。そんなリリィの顔を見て、ユリスの胸はさらに高まる。

(この顔やばい、止まれないかも)

 コツン、とユリスはリリィのおでこに自分のおでこをつけ、リリィに尋ねる。

「ね、キス以上のこともしていい?リリィが嫌ならやらない」

< 23 / 103 >

この作品をシェア

pagetop