移動初日の歓迎会で記憶を失い朝目が覚めたら女嫌いで有名な先輩が隣で寝ていました

二話

ユリスの発言にエイルとベリアは絶句する。

「ま、待って、ユリスさんが、微笑んだ……しかも女性のリリィちゃんに……」

 ベリアは信じられないものを見るような目でユリスを凝視する。エイルも口をパクパクさせて固まったままだ。

(え?え?なに?どゆこと?今はいったい何が起こってるの?ユリスさんが笑うのってそんなに珍しいことなの?てゆーかあれって笑ったうちに入るんだ?)

「おい、お前ら朝から何をしているんだ。早く席に着け」

 突然声がして銀髪にアメジスト色の瞳、眼鏡をかけた壮年の男が部屋に入ってきた。研究課第一部門の部門長であるエデンだ。
 エデンの一言にエイルもベリアも我に返り、そそくさと席に着く。

「みんな席に着いたな。それでは朝礼を始める。その前にリリィ・ハルベルト」

「は、はいっ」

 突然呼ばれてリリィは思わずその場で跳ね上がる。

「昨日は第二部門の連中にずいぶん飲まされていたようだったが大丈夫か」

「あ、はい……」

 チラリとユリスを見るとユリスは真顔で頬杖をつきながらデスクに表示された魔法データを眺めている。

「そうか。それならよかった。来て早々の歓迎会で申し訳なかったな。すべての部門が合う日程が他になかったんだ。これから少しずつでいい、仕事と関わる人間の名前と顔を覚えていってくれ」

「わ、わかりました。これからよろしくお願いします」

 その場でお辞儀をするリリィに、エイルはニッと笑い、ベリアもウィンクしてきた。ユリスは相変わらず無表情だ。

「それでは今日の業務についてだが……」


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