移動初日の歓迎会で記憶を失い朝目が覚めたら女嫌いで有名な先輩が隣で寝ていました
 ユリスがリリィを助け出している頃、エデンたちは同じ建物の別フロアで白いローブを羽織った魔法使いたちに囲まれていた。人数だけでいえばエデンたちは圧倒的に不利な状況だ。

「国の犬どもが不法侵入とは」
「部下が拉致監禁されている、助けに来ただけだ」

 エデンがそう答えた瞬間、双方の間に火花が走る。エイルやベリアたちも他の魔法使いたちと交戦が始まった。

 フロア全体で雷や氷、炎や風などありとあらゆる魔法が繰り広げられている。魔法で言えばエデンたちが圧倒的に有利だった。あっという間に白いローブを羽織った魔法使いたちは倒れ、拘束魔法をかけられる。その場に突然魔法陣が現れ、ユリスとリリィがいた。

「リリィちゃん!」
「無事だったんだな、よかった」

 ベリアたちが嬉しそうに言うと、リリィは控えめに微笑んでからお辞儀をした。

「私のせいでみなさんにご迷惑をおかけしてしまって、申し訳ありません」
「いや、こちらももっと早く話しておくべきだった。リリィからも話を聞いていればこんなことにはならずに済んだかもしれない。こちらこそ申し訳ない」

 エデンがそう謝罪すると、他のみんなも大きく頷く。その様子を見て、リリィは胸が熱くなっていた。

(みなさん本当に優しい人たちばかり……)

「俺も謝らなきゃいけないな。歓迎会の日、リリィちゃんに魔法薬を飲ませて眠らせたのは第二部門だ。第一部門より先にリリィちゃんを調べようとしたんだが、するべきことではなかった。本当にすまないと思っているよ」

 いつもはキラキラとした笑顔を向けるロベリオが真剣な顔で謝るので、リリィは戸惑ってしまう。

「いえ、確かにされたことは許せませんが、そのおかげでこうしてユリスさんと親しくなることができたので……もうそんなに気にしないでください」
「リリィちゃんならそう言ってくれると思ったよ」
「ロベリオさん、調子に乗らないでください」

 ユリスが冷ややかな顔で言うと、ロベリオは肩をすくめてフッと微笑んだ。その様子を見て、エデンが口を開く。

「よし、この話は一度ここで終わりにしよう。この先の部屋から嫌な感じがする。急ごう」


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