移動初日の歓迎会で記憶を失い朝目が覚めたら女嫌いで有名な先輩が隣で寝ていました
 リリィの両親は謎の不審死を遂げている。ハイルの話を聞いてリリィは確信した。両親を殺したのはこの男だ。

「さぁ、何のことだろうね?聞き分けのない必要のない人間は処分するようにと部下に指示したまでだよ」
「き、さま……」

 ハイルの話を聞き、床に倒れたままのユリスが怒りに満ちた表情でハイルを睨む。

「ほう、この状況でまだ意識があるか」
「グアッ」
「ユリスさん!」

 ハイルの一言でユリスの体をさらに何かが押しつぶしていく。苦しげにうめくユリスの名をリリィが叫んだ。

「さて、リリィ君。君の選択肢は一つしかない。ここにいる全員を助けたいのであれば赤い雫の魔力を発動させる方法を教えたまえ。それができなければここにいる人間は全員死ぬ。君のご両親のように不審死という形でね」
「そ、んな……私は、何も知らな……っ!痛い!」

 リリィが突然頭を抱えてうめき出した。リリィの両目は大きく開かれ、その場に膝をつく。そしてリリィの脳内には両親と共にいた頃の記憶が一気に駆け巡っていた。

「……!」

 急に顔をあげたリリィはハイルの顔を見て睨んだ。

「あなた、私の両親を、騙したのね……!」
「ほおう、なぜそう思うのだ」
「あなたは両親に赤い雫を探させ、研究させた。魔力を膨大に溜め込むその石を国の発展のために役立てたいと。でも実際はあなたが自分自身のために赤い雫を欲していただけだったのね。それに気づいた両親は赤い雫を渡すことを拒んだ。それを許さないあなたは、私の両親を……!」

 リリィの周りに魔力が現れる。だがそれを見てもハイルは余裕な笑みを崩さなかった。

「ははは、君自身の魔力は大したことがない。私に対抗できるとでも思っているのかね」

< 33 / 103 >

この作品をシェア

pagetop