移動初日の歓迎会で記憶を失い朝目が覚めたら女嫌いで有名な先輩が隣で寝ていました
「ユリスとリリィには来週から出張に出てもらう。東の大森林で魔物討伐に出ている魔法騎士団から応援要請が来た」
部門長のエデンからそう告げられたリリィとユリスは一瞬目を合わせてからエデンを見る。
「リリィはまだ出張したことがなかっただろう。今回の討伐は難しいものではないが人手不足のようだ。ユリス、リリィに現地で色々と教えてやってくれ」
「わかりました」
ユリスがそう言ってリリィを見ると、リリィは神妙な面持ちで床を見つめていた。
エデンから出張命令を受けた後、リリィとユリスは昼休みに屋上でお弁当を食べていた。
「リリィ、さっきからなんか静かだけどどうかした?」
ユリスの言葉にリリィは箸を止め口を開き何かを言おうとするが、すぐに首を横にふってお弁当へ箸を伸ばした。
「もしかして、魔法騎士団からの要請だから出張先に元カレがいるかもしれないと思ってる?」
ユリスの言葉にリリィの箸がぴたりと止まった。
(やっぱりか)
リリィが研究課へ移動する二年前、リリィにひどい言葉を浴びせ一方的に婚約破棄をした男は魔法騎士団の一人だ。もしかすると今回の出張で一緒になるかもしれない。そう思うとリリィの心の中に黒い靄のようなものがどんどん広がっていく。
「リリィが気に止むことなんてない。もしかしたらいないかもしれないんだし、いたとしても俺がついてるから大丈夫」
ユリスがリリィの顔を覗きこみじっと瞳を見つめる。その瞳には優しさと強さが見えてリリィは思わずドキリとする。
「どんなことがあってもリリィのことは俺が守る。どんな時だって何があったって俺は絶対にリリィの側にいるし味方だから」
そう言って優しく頬笑むユリスの顔を見つめながら、いつの間にかリリィは両目から涙をはらはらと流していた。
「ご、めんなさ、い」
リリィは手で目元をこすりながら笑顔を作るが、涙はいっこうに止まらない。ずいぶん昔の話だ、未練など全くないし今はユリスがいて幸せな日々を送っている。だけどもしあの男に会ってまたひどいことを言われたとしたら。それはリリィにとって大きな不安になっていたが、ユリスという支えがいることで緊張の糸が途切れたのだろう。そんなリリィをユリスは優しく静かに抱き寄せた。
「いいよ、強いリリィも弱いリリィもどんなリリィも大好きだから。どんなときでも俺がいるから安心して」
ユリスの暖かさと優しさにリリィはほうっと息をもらして頬笑む。どんなことがあっても、この人と一緒ならば大丈夫なのだと思える存在。リリィにとってユリスは大きくて大切で愛する存在になっていた。
ユリスに抱き締められたままリリィはぼんやりと空を見つめる。そして静かに呟いた。
「大好きです」
「……俺も」
リリィの言葉を聞いてユリスは嬉しそうにそう返事をした。
部門長のエデンからそう告げられたリリィとユリスは一瞬目を合わせてからエデンを見る。
「リリィはまだ出張したことがなかっただろう。今回の討伐は難しいものではないが人手不足のようだ。ユリス、リリィに現地で色々と教えてやってくれ」
「わかりました」
ユリスがそう言ってリリィを見ると、リリィは神妙な面持ちで床を見つめていた。
エデンから出張命令を受けた後、リリィとユリスは昼休みに屋上でお弁当を食べていた。
「リリィ、さっきからなんか静かだけどどうかした?」
ユリスの言葉にリリィは箸を止め口を開き何かを言おうとするが、すぐに首を横にふってお弁当へ箸を伸ばした。
「もしかして、魔法騎士団からの要請だから出張先に元カレがいるかもしれないと思ってる?」
ユリスの言葉にリリィの箸がぴたりと止まった。
(やっぱりか)
リリィが研究課へ移動する二年前、リリィにひどい言葉を浴びせ一方的に婚約破棄をした男は魔法騎士団の一人だ。もしかすると今回の出張で一緒になるかもしれない。そう思うとリリィの心の中に黒い靄のようなものがどんどん広がっていく。
「リリィが気に止むことなんてない。もしかしたらいないかもしれないんだし、いたとしても俺がついてるから大丈夫」
ユリスがリリィの顔を覗きこみじっと瞳を見つめる。その瞳には優しさと強さが見えてリリィは思わずドキリとする。
「どんなことがあってもリリィのことは俺が守る。どんな時だって何があったって俺は絶対にリリィの側にいるし味方だから」
そう言って優しく頬笑むユリスの顔を見つめながら、いつの間にかリリィは両目から涙をはらはらと流していた。
「ご、めんなさ、い」
リリィは手で目元をこすりながら笑顔を作るが、涙はいっこうに止まらない。ずいぶん昔の話だ、未練など全くないし今はユリスがいて幸せな日々を送っている。だけどもしあの男に会ってまたひどいことを言われたとしたら。それはリリィにとって大きな不安になっていたが、ユリスという支えがいることで緊張の糸が途切れたのだろう。そんなリリィをユリスは優しく静かに抱き寄せた。
「いいよ、強いリリィも弱いリリィもどんなリリィも大好きだから。どんなときでも俺がいるから安心して」
ユリスの暖かさと優しさにリリィはほうっと息をもらして頬笑む。どんなことがあっても、この人と一緒ならば大丈夫なのだと思える存在。リリィにとってユリスは大きくて大切で愛する存在になっていた。
ユリスに抱き締められたままリリィはぼんやりと空を見つめる。そして静かに呟いた。
「大好きです」
「……俺も」
リリィの言葉を聞いてユリスは嬉しそうにそう返事をした。