移動初日の歓迎会で記憶を失い朝目が覚めたら女嫌いで有名な先輩が隣で寝ていました
十九話
翌朝、ユリスとリリィは魔法騎士団本部から東の森林へ出発した。東の森林には魔法騎士団の第一部隊と第二部隊がすでに魔物討伐へ向かっているが、苦戦しているためリリィたちの所属する研究課にも応援要請が来たのだった。
リリィたちと共に現地へ向かうのは騎士団長と第三・第四部隊だ。リゲルは第三部隊に属しているためリリィたちと同じように現地へ向かうことになる。
リリィは研究課から持ってきた大量の魔法薬を準備し、団員たちと共にユリスの発動した転移魔法で移動した。
転移魔法で移動した先は魔物がいる場所より少し離れた所に設けられた騎士団のテントの前だった。
そこは救護所も兼ねており、回復のための魔法薬が無くなりそうだと言われていた場所だ。リリィはすぐさま持参した魔法薬を救護班へ手渡した。
「助かります!本当にありがとうございました」
「状況はあまりよくないのですか?」
テントの中も外も怪我人で溢れている。討伐へ向かったニ隊ともほとんどの騎士が怪我を負い、ここまで避難してきたらしい。
「いつもなら難なく対応できるはずなのですが、今回の魔物はおかしいくらいに強いそうで……今は隊長二名と腕の立つ騎士が数名残ってなんとか食い止めている状態です」
魔物がこの場所まで来てしまえば惨劇になるのは目に見えている。なんとか隊長たちが阻止しているようだが一刻を争う。
「我々も向かおう。現地にいる団員たちが心配だ」
「はっ!」
騎士団長が言うと、第三・第四部隊の団員たちは威勢よく返事をする。
リリィとユリスは視線を合わせて頷き、団員たちの後へ続いた。
避難所を兼ねたテントからしばらく歩いていると、魔物の慟哭や団員の剣の音が響いてくる。その音のする方へ足早に向かうと、大きな大きな狼型の魔物と騎士団員が戦っていた。
団員から攻撃魔法が繰り広げられるが魔物は傷ひとつついていない。
炎を纏った剣で切りつけられてもすぐに回復してしまう。
「これは一体どういうことだ……」
騎士団長が目の前の光景にあ然とする。
「リリィ」
「ユリスさん、やっぱりあの魔力、そうですよね」
ユリスが言わんとしていることがリリィにはわかった。二人とも魔物から漏れ出る魔力に覚えがある。
リリィが両親から託された赤い雫と呼ばれた魔石を狙っていたハイルから感じた魔力と同じなのだ。
「まさか、紅い雫と同じ魔石をあの魔物が取り込んでいる……?」
「だとしたらやっかいだな。魔法騎士団で太刀打ちできないわけだ」
どういう過程で魔物が魔石を取り込んでしまったのかはわからない。ただ、世界中のどこかに魔石はまだ散らばっているとハイルは言っていた。だとしたら魔物が魔石を取り込んでいる可能性は高い。
「騎士団長!あの魔物から通常とは違う魔力を感じます。現在、我々研究課が研究している魔力と同じものです。ここは我々に任せてもらえますか」
ユリスが騎士団長だけでなくその場にいる団員全員に聞こえるほどの大声で言う。魔石について詳しく言うことはできないが嘘はついていない。
「わかった!全団員に告ぐ!魔法騎士団はこの場からすこし離れた場所で待機!」
騎士団長の声に団員たちは返事をして次々にリリィたちの後方へ走っていく。リゲルもリリィたちを一瞥して走り去って行く。一瞬、ユリスと目が合うがユリスの瞳は氷のように冷たく、リゲルは思わず心臓が止まるような気がした。
リリィたちと共に現地へ向かうのは騎士団長と第三・第四部隊だ。リゲルは第三部隊に属しているためリリィたちと同じように現地へ向かうことになる。
リリィは研究課から持ってきた大量の魔法薬を準備し、団員たちと共にユリスの発動した転移魔法で移動した。
転移魔法で移動した先は魔物がいる場所より少し離れた所に設けられた騎士団のテントの前だった。
そこは救護所も兼ねており、回復のための魔法薬が無くなりそうだと言われていた場所だ。リリィはすぐさま持参した魔法薬を救護班へ手渡した。
「助かります!本当にありがとうございました」
「状況はあまりよくないのですか?」
テントの中も外も怪我人で溢れている。討伐へ向かったニ隊ともほとんどの騎士が怪我を負い、ここまで避難してきたらしい。
「いつもなら難なく対応できるはずなのですが、今回の魔物はおかしいくらいに強いそうで……今は隊長二名と腕の立つ騎士が数名残ってなんとか食い止めている状態です」
魔物がこの場所まで来てしまえば惨劇になるのは目に見えている。なんとか隊長たちが阻止しているようだが一刻を争う。
「我々も向かおう。現地にいる団員たちが心配だ」
「はっ!」
騎士団長が言うと、第三・第四部隊の団員たちは威勢よく返事をする。
リリィとユリスは視線を合わせて頷き、団員たちの後へ続いた。
避難所を兼ねたテントからしばらく歩いていると、魔物の慟哭や団員の剣の音が響いてくる。その音のする方へ足早に向かうと、大きな大きな狼型の魔物と騎士団員が戦っていた。
団員から攻撃魔法が繰り広げられるが魔物は傷ひとつついていない。
炎を纏った剣で切りつけられてもすぐに回復してしまう。
「これは一体どういうことだ……」
騎士団長が目の前の光景にあ然とする。
「リリィ」
「ユリスさん、やっぱりあの魔力、そうですよね」
ユリスが言わんとしていることがリリィにはわかった。二人とも魔物から漏れ出る魔力に覚えがある。
リリィが両親から託された赤い雫と呼ばれた魔石を狙っていたハイルから感じた魔力と同じなのだ。
「まさか、紅い雫と同じ魔石をあの魔物が取り込んでいる……?」
「だとしたらやっかいだな。魔法騎士団で太刀打ちできないわけだ」
どういう過程で魔物が魔石を取り込んでしまったのかはわからない。ただ、世界中のどこかに魔石はまだ散らばっているとハイルは言っていた。だとしたら魔物が魔石を取り込んでいる可能性は高い。
「騎士団長!あの魔物から通常とは違う魔力を感じます。現在、我々研究課が研究している魔力と同じものです。ここは我々に任せてもらえますか」
ユリスが騎士団長だけでなくその場にいる団員全員に聞こえるほどの大声で言う。魔石について詳しく言うことはできないが嘘はついていない。
「わかった!全団員に告ぐ!魔法騎士団はこの場からすこし離れた場所で待機!」
騎士団長の声に団員たちは返事をして次々にリリィたちの後方へ走っていく。リゲルもリリィたちを一瞥して走り去って行く。一瞬、ユリスと目が合うがユリスの瞳は氷のように冷たく、リゲルは思わず心臓が止まるような気がした。