移動初日の歓迎会で記憶を失い朝目が覚めたら女嫌いで有名な先輩が隣で寝ていました
「リリィ、俺の後ろにいて」

 ユリスはそう言ってリリィに防御魔法をかける。

「ユリスさん、大丈夫ですか」
「俺を誰だと思ってるの。特級魔法士だよ」

 ユリスがそう言うとユリスの周りにユリスの魔力が現れる。それは通常の魔法士にはありえないほどの魔力だ。あまりの魔力量に圧倒され、リリィは目を開けていられず目を細めてしまう。

(ユリスさん、やっぱりものすごい人なんだわ……)

 ユリスの魔力に気づいた魔物がユリスへ視線を向け、慟哭をあげる。

 ハイルとの戦いでは、長年の魔石からの魔力供給によるハイルの魔力量が異常だったためユリスたちは防御魔法が途中で壊れかけた。

 だが、この魔物は魔石を取り込んでいると言ってもハイルほどではない。

 ーー勝てる。

 ユリスが両手を真上に翳すとユリスの頭上に大きな光の渦が現れる。そこから閃光が走り、魔物へ直撃した。

 魔物は焼かれたようにジュウジュウと音を出し煙が上がっている。だがそんな状態でも構わず口を開けると口のから炎が吐かれユリスを炎が包む。
 だがユリスは防御魔法で覆われ、そのまま炎を打ち消した。

 次第に魔物の皮膚が回復し始める。ユリスはふわりと宙へ浮き、手を魔物へ翳した。すると魔物へ雷が直撃し、魔物はビリビリと電気を発しながら慟哭をあげる。その慟哭と共にユリスへ氷の刃が向かうが、全てユリスに届くことはなく一斉に砕け散った。

 ユリスが手を一振りすると、地面から鋼の刃が魔物の体を貫く。ユリスの片手が光ると刃は魔物の体を貫いたまま爆発した。何度も何度も繰り返し爆発し、魔物は回復が追いつかないまま粉々になり最後は形もない状態になった。


「あれが、上級魔法士の実力なのか……?」
「何度か研究課の上級魔法士に応援に来てもらったことがあるが、あれほどの戦いは見たことがない」

 少し離れた場所から見ていた騎士団員たちは唖然としながらユリスと魔物の戦いを見ていた。

(なんなんだよ、あの男……あんな魔物とやり合うなんて信じられない。しかもあの魔力量、おかしいだろ。あんな男がリリィのそばにいるのか?あの二人、どう考えても同僚ってだけの雰囲気じゃなかったよな。リリィは一体なんであんな男に……)

 リゲルはユリスとリリィの関係に複雑な感情を持ち始めていた。

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