移動初日の歓迎会で記憶を失い朝目が覚めたら女嫌いで有名な先輩が隣で寝ていました
ガヤガヤ……
ユリスに連れられて魔法省研究課がある研究棟の食堂にリリィは来ていた。廊下を歩いている途中から既にいい匂いが流れてきていたが、食堂内は美味しそうな食べ物の匂いで充満している。
(あぁ〜いい匂い!研究棟の食堂だからもっとこう薬草じみた匂いのする食堂なのかと思っていたけれど、全然そんなことなかった。勝手な想像してなんだか申し訳ないな)
浮立つ気持ちのままあたりをキョロキョロする。食堂は思っていたよりも広く、昼時とあって大勢の職員で賑わっていた。
(あ、れ?なんかすごい見られている気がする)
さっきから痛いほどの視線を感じる。もしかすると異動した初日に歓迎会で飲みつぶれた職員だと陰口を言われているのかもしれない。
「大丈夫?」
「はひっ!?」
急に声をかけられて驚き、変な声が出てしまった。そんなリリィを見ても、ユリスは表情を変えず真顔のままだ。
「なんかすごく見られてるけど気にする必要ないよ。どうせ昨日のことなんてみんなすぐに忘れる」
(誰よりも早く忘れたいと思っているのはこの私ですけどね……)
ほうっとため息をつくがユリスはそんなことお構いなしにどんどん進んでいく。
「ここのおすすめは日替わり定食かな。栄養バランスも考えられてて美味しいし」
ユリスの話にへぇ〜とメニューを見ながら歩いていたリリィに、突然人がぶつかった。その衝撃でリリィは思わず体勢を崩し、よろけてしまう。
「おっと」
そんなリリィを、ユリスが片手で受け止める。
「大丈夫?足とか捻ってない?」
「あ、ありがとうございます、大丈夫です」
これまた至近距離、しかもユリスのしっかりした腕に抱き止められているリリィは思わず赤面してしまった。
「お、おいあれ……」
「嘘だろ、マジかよ」
「あの女嫌いのユリスが女を助けたぞ」
「この間なんて目の前でわざと倒れた女職員に見向きもしなかったのに、なんだよあれ、ちゃんと支えてるじゃん」
ザワザワと食堂内が騒がしくなる。女嫌いのユリスが倒れそうになった女職員を助けたことにみんな驚きを隠せないでいるようだ。
(え、なんでこんなに騒がれているの?ユリスさんが私を助けたことってそんなにすごいことなの?え?)
「あ、あの、もう大丈夫です。アリガトウゴザイマシタ」
居た堪れなくなったリリィは、そっとユリスから離れお辞儀をした。
「あ、うん」
ユリスは相変わらず表情を変えずに真顔のままだ。だが、リリィを掴んだ自分の手をぼんやり眺めてからぎゅっと握り拳を作る。
「あれあれ、そこにいるのは第一部門のユリスとリリィちゃんじゃないか」
突然人の声がしたと思うと、同時にきゃーと黄色い歓声が上がった。声のする方には、長めの金髪をゆるく結んだ背の高い見目麗しい男性がいた。キラキラと眩しいほどの笑顔でひらひらと二人に手を振っている。そんな男性を周りの女性たちはうっとりした顔で眺めている。どうやら研究課で人気者のようだ。
「……ロベリオさん」
ユリスに連れられて魔法省研究課がある研究棟の食堂にリリィは来ていた。廊下を歩いている途中から既にいい匂いが流れてきていたが、食堂内は美味しそうな食べ物の匂いで充満している。
(あぁ〜いい匂い!研究棟の食堂だからもっとこう薬草じみた匂いのする食堂なのかと思っていたけれど、全然そんなことなかった。勝手な想像してなんだか申し訳ないな)
浮立つ気持ちのままあたりをキョロキョロする。食堂は思っていたよりも広く、昼時とあって大勢の職員で賑わっていた。
(あ、れ?なんかすごい見られている気がする)
さっきから痛いほどの視線を感じる。もしかすると異動した初日に歓迎会で飲みつぶれた職員だと陰口を言われているのかもしれない。
「大丈夫?」
「はひっ!?」
急に声をかけられて驚き、変な声が出てしまった。そんなリリィを見ても、ユリスは表情を変えず真顔のままだ。
「なんかすごく見られてるけど気にする必要ないよ。どうせ昨日のことなんてみんなすぐに忘れる」
(誰よりも早く忘れたいと思っているのはこの私ですけどね……)
ほうっとため息をつくがユリスはそんなことお構いなしにどんどん進んでいく。
「ここのおすすめは日替わり定食かな。栄養バランスも考えられてて美味しいし」
ユリスの話にへぇ〜とメニューを見ながら歩いていたリリィに、突然人がぶつかった。その衝撃でリリィは思わず体勢を崩し、よろけてしまう。
「おっと」
そんなリリィを、ユリスが片手で受け止める。
「大丈夫?足とか捻ってない?」
「あ、ありがとうございます、大丈夫です」
これまた至近距離、しかもユリスのしっかりした腕に抱き止められているリリィは思わず赤面してしまった。
「お、おいあれ……」
「嘘だろ、マジかよ」
「あの女嫌いのユリスが女を助けたぞ」
「この間なんて目の前でわざと倒れた女職員に見向きもしなかったのに、なんだよあれ、ちゃんと支えてるじゃん」
ザワザワと食堂内が騒がしくなる。女嫌いのユリスが倒れそうになった女職員を助けたことにみんな驚きを隠せないでいるようだ。
(え、なんでこんなに騒がれているの?ユリスさんが私を助けたことってそんなにすごいことなの?え?)
「あ、あの、もう大丈夫です。アリガトウゴザイマシタ」
居た堪れなくなったリリィは、そっとユリスから離れお辞儀をした。
「あ、うん」
ユリスは相変わらず表情を変えずに真顔のままだ。だが、リリィを掴んだ自分の手をぼんやり眺めてからぎゅっと握り拳を作る。
「あれあれ、そこにいるのは第一部門のユリスとリリィちゃんじゃないか」
突然人の声がしたと思うと、同時にきゃーと黄色い歓声が上がった。声のする方には、長めの金髪をゆるく結んだ背の高い見目麗しい男性がいた。キラキラと眩しいほどの笑顔でひらひらと二人に手を振っている。そんな男性を周りの女性たちはうっとりした顔で眺めている。どうやら研究課で人気者のようだ。
「……ロベリオさん」