移動初日の歓迎会で記憶を失い朝目が覚めたら女嫌いで有名な先輩が隣で寝ていました
「3日休めるならどこか行きたいな」
「どこがいいですかね?」

 仕事が終わり、リリィとユリスは出かける計画の話をしながら退勤しようと研究課のある研究棟のエントランスを出ようとした。エントランスの入口に人影があり、その人影がこちらを見る。ふとユリスがその人影を見て立ち止まった。不思議に思ったリリィがユリスを見上げながら声をかける。

「ユリスさん?」

 不思議そうに見上げるリリィの横でユリスはなんとも言えない複雑な顔をしてその人影を見ている。

「おう、ユリス!お疲れ様」

 そう言って片手をあげたその人は背が高く引き締まった体つきで短髪の黒髪、瞳の色はユリスと同じ琥珀色だ。

「兄貴、どうしてここに」
「近くに用があったからついでに来てみた。お前に話もあったし。……って、そちらは?」

 兄貴と呼ばれたその男は興味深そうにリリィを見る。ユリス同様、端正な顔立ちをしていてリリィは思わずドキリとした。

「同僚で彼女のリリィ」
「へぇ、同僚で彼女……彼女!?」
「リ、リリィ・ハルベルトと申します」

 あまりの驚きようにリリィは戸惑いつつも挨拶をする。

「あ、えっと、こいつの兄貴のライムです。どうも」

 ユリスの兄ライムはそう挨拶すると、ユリスの肩にガシッ!と腕をかけてユリスに顔を近づける。

「おいおいおいおい!どういうことだよ!詳しく話を聞かせろ!」
「……うっざ」

 ライムの絡みにユリスは大きくため息をついた。

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