移動初日の歓迎会で記憶を失い朝目が覚めたら女嫌いで有名な先輩が隣で寝ていました
 そんなこんなで帰宅したユリスたちは、ユリスの隣にリリィ、テーブルを挟んでユリスのむかえにライムが座っている。

「なるほどな、膨大な魔力を宿した魔石、か」
「騎士団長の兄貴だから教えたけど、きちんとした報告はいずれ研究課からすると思うからそれまでは他言無用で頼む」
「わかってるって。俺も騎士団が関わった魔物に似たような事例がないか、過去の記録を探してみるよ」

 ユリスの兄ライムは国の騎士団で騎士団長をしている。先日応援に行った魔法騎士団ではなく、剣を主とした騎士団で王族の警備や国全体の治安を任されている。

「それにしても大変だったんだな、リリィちゃん。それにありがとうな、ユリスのこと」

 赤い雫の事件についてユリスから話を聞いたライムは、リリィに優しく声をかけた。

「いえ、そんな!私の方こそユリスさんに感謝してもしきれないので」

 そう言ってふわっと微笑むリリィを見てライムは思わず目を見張る。そんなライムにユリスはコホン、と咳払いをした。

「それで、兄貴は何しに来たんだよ」
「あぁ、そうそう。いや、お前がそうならもうこの話は無しにした方がいいな」
「この話って?」

 ユリスとリリィが不思議そうな顔でライムを見ると、ライムは苦笑する。

「ユリスに縁談が来てるんだよ」
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