移動初日の歓迎会で記憶を失い朝目が覚めたら女嫌いで有名な先輩が隣で寝ていました

二十三話 縁談話

「縁談!?」

 ユリスは心底嫌そうな顔をしてライムを見る。

「家は兄貴が継ぐって決めたんだから俺は別に結婚も何も自由なはずだろ。なんで今さら」
「いや、それはそうなんだけどさ。お前もいい歳だろ。親父があの歳でまだ結婚もしてないなんて公爵家の息子なのにはずかしいだのなんだのってうるさくて」

(えっ、公爵家?ユリスさんて公爵家のご令息だったの?)

 ライムの話にリリィは目を丸くする。そういえば、ユリスの家の話は一度も聞いたことがなかった。

 リリィの驚いた顔を見てユリスが複雑そうな顔をし、ライムも不思議そうな顔をする。

「もしかして、リリィちゃんに家のこと話してないのか」
「いちいち言う事じゃないだろ。それにそもそも研究課は実力主義で家柄については一切話をしない。誰がどんな家柄かなんて関係ないしみんな興味もない。そこがよくて俺は今の仕事についてるんだ」

 はぁ、と深くため息をつくユリス。

「とにかく、俺にはリリィがいるし縁談は必要ないから。親父にも余計なことするなって言っておいてよ。そもそもわざわざ忙しい兄貴を使うなんて……」
「いや、親父が直接来てもお前は話もしないだろ」

 ライムが苦笑するとユリスはまたため息をついた。
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