移動初日の歓迎会で記憶を失い朝目が覚めたら女嫌いで有名な先輩が隣で寝ていました
「お兄さまがその媚薬を飲んでから私に指一本でも触れれば、すぐに私はこの薬を飲みます。これは確実に妊娠を誘発する魔法薬です」
「は!?どこでそんな危ないものを……!」
「入手ルートは秘密です。たった一回のチャンスを逃すわけにはいきませんもの。お兄さまの子供をもうけてしまえばあの恋人だって諦めるしかないでしょう?それとも、お兄さまは子供を孕んだ私とその子供を見捨ててあの恋人の元へ行くような外道なのかしら」
「外道は君だろう!それにそんな一般的には流通しないような薬、飲んだら君の体に何が起こるかわからないんだぞ!」
「あら、こんな時でも私の体のことまで気遣ってくださるなんてやっぱりお兄さまは優しいわ。でも大丈夫。ちゃんと上級魔法が使える人間が私のためだけに調合してくれたんですもの」

(俺はベラを甘く見過ぎていたのか?こんな無茶なことするなんてありえない、確かに小さい頃から欲しいものは絶対手に入れようとするしそのためには手段を選ばなかったが、ここまでのことをするような子ではなかったのに。それに上級魔法が使える人間が後ろにいるっていうのは一体……)

 ベラを睨みながらユリスは考える。だが、そんなユリスにはお構いなしにベラは微笑みながら話し続けた。

「そんなに怒らないでお兄さま。お兄さまが媚薬を飲んでも私に指一本触れなければそれでおしまいなのよ。そんなのお兄さまなら簡単でしょ?」

 そう言ってユリスの前に赤紫色の液体が入った小瓶を差し出した。

「さ、飲んで?」
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