移動初日の歓迎会で記憶を失い朝目が覚めたら女嫌いで有名な先輩が隣で寝ていました

二十七話

「お茶をお持ちしました」

 そう言って部屋に入ってきたレインは、片手にティーセットを持ちながら優雅にお辞儀をしリリィを見て微笑んだ。微笑んではいるが、その瞳は獲物を見つけ今にも捕獲しようとする獣そのものだ。そんなレインを見てリリィは恐怖にカタカタと体を震わせる。

「レインくん、どうして……」

 椅子から立ち上がり後退りするリリィ。そんなリリィの言葉を無視してレインはテーブルにティーセットを置きティーカップにお茶を注ぐ。

「どうぞ、この屋敷にある最上級の茶葉だよ。リリィちゃんのために僕が淹れたんだ、飲んでくれるよね?」

 レインの言葉にリリィはヒッと息を呑み首を横に振る。

「い、いや……」
「どうして?毒や変な薬なんて入っていないよ?僕は紳士だからね、リリィちゃんには魅了も使いたくないし魔法薬に頼ることもしたくないんだ」
「し、紳士?紳士は、人の部屋を勝手に荒らしたり、拉致したりしない、わ」
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