移動初日の歓迎会で記憶を失い朝目が覚めたら女嫌いで有名な先輩が隣で寝ていました
「さ、飲んで?」

 目の前に差し出された赤紫色の液体が入った小瓶をユリスは睨みつける。

(これを飲んだとしても特級魔法士である俺ならなんとか耐えられるはずだ。だが、俺がベラに触れなくてもベラは何かしらの理由をつけて妊娠誘発薬を飲むだろうな。それにここまで用意周到ならベラは俺と行為をするために他にも何か仕掛けている可能性もある。ベラが薬を飲む前にベラからあの薬を奪ってしまうしかない)

 ユリスが目の前の小瓶を掴み蓋を開けると、小瓶からはほのかに甘い花の香りが漂う。ユリスは眉間に皺を寄せながら小瓶に口を近づけ中身の液体を一気に飲み干した。そんなユリスを見てベラは目を輝かせる。

「ウッ!」

 カタン!とユリスの手から空になった小瓶が床に落ち、ユリスは胸を押さえてその場に膝をつく。身体中が焼け付くように熱く、視界が霞みその場に立っていられないほどの苦しみが襲う。
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