移動初日の歓迎会で記憶を失い朝目が覚めたら女嫌いで有名な先輩が隣で寝ていました
(これはまさか……)

 ユリスが小瓶の中身を飲み干したのを見てベラはもう片方の小瓶の蓋を開けようとした、だがベラの手首をユリスが掴みそれを阻止した。

「お兄さま、私に触れましたわね!私はこれを飲みます」

 ユリスの手を遮り小瓶の蓋を開けようとするが、ユリスはベラの両手を掴んで床に押し倒した。

「これ、は、飲むな……死ぬ、ぞ」

 ユリスに押し倒されたベラは一瞬顔を赤らめ目を輝かせたが、ユリスの表情を見て一気に青ざめる。

「お兄さま、どう、なさったのですか……!」

 ユリスの顔は蒼白で呼吸が荒く、息をするたびにゼーゼーと異常な音を発している。ベラを掴む手も力は入っているが小刻みに震え、死人の様に冷たい。まるで今にもそのまま死んでしまいそうなほどだ。

「これ、は、毒薬、だ」

 その言葉を聞いた瞬間、ベラの手から小瓶がコトン、と床に転がった。
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