移動初日の歓迎会で記憶を失い朝目が覚めたら女嫌いで有名な先輩が隣で寝ていました
 動転したベラが部屋から出ていく様子を苦しげにユリスは見つめていた。追いかけたいが、すぐに走り出せるほどまでは回復しておらず、体がまだ言う事を聞かない。

(レイン、ベラはレインと言った。まさかあの男が……リリィ!)

 ダンッ!と床に拳を叩きつける。なぜもっと早く気づかなかったのだろうか。ベラにレインが接触しているとなぜ思いもしなかったのか。
 後悔だけがユリスの中にじわじわと広がっていく。こうしている間にももしかするとレインはリリィを……。

すぐにユリスは床に片手を付けると黄色に輝く魔法陣が浮かび上がった。

『どうした、ユリス』
「今、とある屋敷にいるのですが毒を盛られ身動きの取れない状態です。リリィが危ないので急ぎたいのですが……ゴホッゴホッ」
『大丈夫か、すぐに向かう。悪いがその場所に転移用の出口側の魔法陣だけ配置してくれ』
「わかりました」

 ユリスは立ち上がり部屋の中央の床に両手をつく。青色に輝く魔法陣が浮かび上がると床に魔法陣が固定された。

(伝達魔法でエデン部門長に連絡はできた。転移魔法用の魔法陣も配置したし、あとはみんなを待つだけだ)
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