移動初日の歓迎会で記憶を失い朝目が覚めたら女嫌いで有名な先輩が隣で寝ていました
「げっ、リリィ姉ちゃんだ」
「あんたたち、来たばかりの子をいじめるなんて最低!もしこれからもこの子のこといじめるようなら私が許さないんだから!」

 ふんす、と鼻息を荒くしてリリィが仁王立ちすると、レインをいじめていた悪ガキたちは一斉に散り散りになっていった。

「大丈夫?ごめんね、怖かったでしょ?」

 少ししゃがみながらリリィは手を差し出して微笑む。その笑顔に、レインの胸は高鳴った。目の前の女の子はさっきまであんなに勇ましかったのに、今はこんなにも優しくて暖かい。

 その後もレインはことあるごとにリリィに助けられ、すっかりリリィに懐いたレインはいつもリリィの後をくっついて回っていた。

「リリィちゃんは施設の中でも年上だからみんなのお姉さんみたいなものだけど、レイン君とは本当に仲がいいのねぇ」

 施設にいる大人たちはリリィとレインを見かけるといつもそう言って朗らかに笑う。その言葉と笑顔が大好きで嬉しくて、レインはリリィさえいれば世界は美しくどんな時でも輝いているのだと思った。
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