移動初日の歓迎会で記憶を失い朝目が覚めたら女嫌いで有名な先輩が隣で寝ていました
 驚きながら少し怒っているユリスに、エデンが申し訳なさそうに言うと、リリィも少ししょんぼりとしながらもすぐに顔を上げてレインを見つめた。

「レイン君!もうやめて!こんなことしても何にもならない!」

 リリィの呼びかけに、レインは冷めた瞳でリリィを見つめ口の端をほんの少しあげる。

「何にもならないことはわかってるよ、わかった上でやってるんだから邪魔しないでくれる?」

 そう言った瞬間、リリィの目の前に爆発が起こった。

「リリィ!」

 ユリスが叫ぶと、リリィの周辺の砂埃が風に流され、防御魔法によって無傷のリリィの姿が現れた。

「大丈夫だ、リリィのことは俺たちが全力で守り抜く」

 エデンがそう言うと、近くにいたロベリオたちも力強く頷く。

「邪魔くさいな。みんな消えればいい」

 そう言ってレインがリリィたちへ手を向けて魔法を打ち込もうとした瞬間。ヒュンッと音がして、レインの体は吹っ飛ばされた。飛ばされたレインはかろうじて残っていた岩壁にそのままめりこむ。ドオオオオンという大きな音がして、レインは岩壁ごと崩れ落ちて行った。

 地面に落ちたレインは何が起こったのかわからないまま瞳を開ける。すると、目の前にはユリスの顔があった。ユリスはレインの胸ぐらを掴みレインを無理やり起こす。どうやらレインはあの一瞬でユリスに殴られ、その衝撃で吹っ飛ばされたようだ。地面に落ちたレインにすぐユリスは追いつき、レインの胸ぐらを掴んでいるという状況らしい。
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