イジワルな君の甘い溺愛
「大体の解き方はわかっただろ」
「……うん」
「お前は途中で凡ミスしすぎ。数学は途中が違えば全部間違う。焦らずに落ち着いて解け」
「……うん。あの、本当にありがとう。私勉強方法曖昧なままワーク何回も解いて、ちゃんと理解しないままやった気になってた」
「お前さ、中学のテストもこんな点数なわけ?」
「いや、いつもこんなに悪いわけじゃないけど…」
中学の頃は点数が高いわけでも低いわけでもなく、綺麗に真ん中のラインにいた。
でも中学と高校のテストは当たり前に違うわけで。
もっと頑張らないとだよね…
私は小さくため息をついた。
「あの、それで栗山くんはなんでここに…?」
やることが全部終わって、私はずっと疑問に思っていたことを尋ねた。
「父親の転勤先がこっちになったから戻ってきた」
「あぁ…なるほど」
と納得しちゃった私だけど、聞きたかったのはそうじゃなくて、何をしに図書館に来たのか、だ。
「えと……それで荷物も持たずになぜここに?」
「お前、勉強も終わったし帰るんだろ」
はぐらかすように、話題を変えられた。
「え?あ…まあ」
「だったら帰るぞ」
「え、なんで栗山くんと帰るの!?」
「嫌なのか?」
ギロリと睨まれて、私は「と、とんでもないです!」と首を振った。
もう完全に栗山くんのペースに、抗えない。
どうせのろのろ準備すれば「早くしろよ」と怒られるに違いないから、私は超特急で準備した。
栗山くん、どの辺に引っ越してきたんだろ…?
そんなことを考えながら、少し先を歩く栗山くんの背中を見つめた。