イジワルな君の甘い溺愛
「赤くなっちゃって、可愛い!いいんだぞ誤魔化さなくっても。あたしはなんでもお見通しなんだから」
夢ちゃんは小さい子を相手にするように、私の髪をわしゃわしゃと撫でた。
✳︎✴︎
「おい、俺と一緒に帰るぞ」
一日中栗山くんを避け続けて、いざ帰ろうとした時についに捕まった。
「え、いや…その今日は用事が」
今日は図書委員会の先輩が当番の日だから、少しだけ会いに行きたいんだけど…
「お前、一日中俺のこと無視してたよな」
「な、何のことでしょうか…」
あれからイケメン転校生の噂はすぐに広がったのか、学年問わず大勢の女子が栗山くんを見に来ていた。
そんな栗山くんといれば目をつけられるし、私みたいに目立たない地味な存在は注目されずに平和に学校生活を送りたい。
「花、あたしもう帰るねー。あれ、今日は先輩のとこ行かないの?」
栗山くんの眉がぴくりと動いた。
「そ、そう!私今からどうしても行かなきゃいけないとこあって…だから一緒には帰れなくて…ごめん!」
「あ、おいっ!」
栗山くんを置いて、私は逃げ出すように教室を飛び出した。