イジワルな君の甘い溺愛
図書館の入り口に立っていた私は高鳴る胸を落ち着かせて、扉を開けた。
カウンターにいた人影が、こちらを向く。
「あ、木嶋さんお疲れ様。もうホームルーム終わったの?」
いつも通りの爽やかな笑顔で出迎えてくれたのは、一学年上の、林真斗(はやし まさと)先輩。
サッカー部で活躍していて、誰にでも優しくて、男女問わず人気だ。
先輩は図書委員会で、4月からずっと図書館に通っていた私は貸し借りで何度か先輩と顔を合わせたことがあった。
通い始めて少したって、ある本を借りようとカウンターに持って行った時だった。
『この本、僕も読んだけどすごく面白かったよ。君、1年生だよね?ここに結構来てるから、本好きなんだなぁって、ずっと思ってたんだ』
その日も当番活動でカウンターにいた先輩がそう声をかけてくれた。
『僕は2年の林 真斗。君は?』
『き、木嶋 花です』
『木嶋さんは、何か好きなジャンルとかあるの?』
『いえ、特にはないんですけど…いつも何となく面白そうだなって思ったのを借りてて』
『そうなんだ。あ、それなら……ちょっと待ってて』
カウンターを出て本棚に向かったと思ったら、何かを手に戻ってきた。