黒眼帯の氷結辺境伯は冷遇された令嬢を一生涯かけて愛したい
 それでも、自分のような人間はいつかルードのそばから離れるべきなのだとソフィアは思うようになっていた。ルードには自分はふさわしくない。だがそれを自分から言う勇気が出せない。いつか言わなければと思いながら、ずるずると先伸ばしにしている自分のこともソフィアは許せなかった。

「ソフィア?顔が暗いけれどどうかしたのか?最近少し塞ぎ勝ちに見えるけれど、もし何か心配ごとがあるなら言って欲しい。俺は君の役に立ちたいんだ」

 ルードはそう言って静かにソフィアの両手を掴む。その手はとても暖かく、ソフィアを見つめる瞳はとても穏やかで優しい。とても愛おしいもの見つめる瞳で、今まで氷結辺境伯などと呼ばれていたのが嘘のようだ。

(あぁ、ルード様は本当になんてお優しい方なのだろう。こんな私にまで心を尽くしてくださる)

 優しくされればされるほど、自分はここにいるべきではない、こんな素敵な方の隣にはもっとふさわしい女性がいるべきた、いつまでもぬくぬくとルードの優しさに甘えているべきではない、そう思えてしまう。

「ルード様、私は……」
「クエエエエエ!」

 意を決して口を開いたソフィアの声がルードに届く前に、ルードへ手紙が届いたことを告げる伝書魔鳥の声が響いた。

「なんだ、伝書魔鳥が俺の元へ直接来るなんてよっぽど急ぎの手紙なのか?」

 ルードが伝書魔鳥の首にかかった手紙を取って読み、そしてすぐに顔をしかめた。

「……君の義父上からの手紙だ。明日こちらに来るらしい。君も一緒に同席してほしいとのことだ」

 嫌な胸騒ぎがして、ソフィアは胸元の服をぎゅっと掴んだ。

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