黒眼帯の氷結辺境伯は冷遇された令嬢を一生涯かけて愛したい

告白

「この度はお時間をいただき感謝します、シャルフ様」

 ルードの元へソフィアの義父エルガンから伝書魔鳥が届いた翌日。応接室のソファに並んで座るルードとソフィアの目の前には、義父のエルガンと派手に着飾った義姉のルシルが座っていた。

「瞳が治ったと聞き、うちのソフィアが役に立ったようで光栄です。いや、本当によかった」

 豪快に笑いながらソフィアを見るエルガンの顔は何かを企むような気持ちの悪い笑みを浮かべている。その顔にゾッとするソフィアに気づき、ルードはそっとソフィアの手を優しく握った。そしてその様子を見たルシルが一瞬険しい顔でソフィアを見る。

「それで、わざわざこちらにお越しいただくとは一体何の御用でしょうか、エルガン子爵」

 感情の全くこもらない声で言うルードに、エルガンは怯むことなく堂々とした態度を崩さない。

「いえね、瞳が治ったと言うのにソフィアとの婚約がまだだとお聞きしたので、ソフィアを返して頂こうかと思いまして」

 エルガンの話にルードもソフィアも驚愕する。

「ソフィアの代わりに、うちの長女であるルシルはいががでしょう。もう両目で見ても凍ることがないのでしたらソフィアは用済みでしょう。そんな見窄みすぼらしい質素な女より、うちの美しいルシルの方が辺境伯家の妻としてふさわしいと思うのです」

 エルガンが口を豪快に開くと金歯が顔を覗かせる。その様子に、ルードは汚らしいものを見たとも言わんばかりに顔を背けた。

「初めましてシャルフ様、ルシル・エルガンと申します。どうぞお見知り置きを」

  そう言ってルシルは優雅にお辞儀をした。ルシルは小さい頃から今までずっと自分の美貌に自信があった。両親も侍女たちも友人たちも、こぞってルシルを可愛いだの美しいだの絶賛する。成長してからは子爵家の令嬢ではあるもののその美貌ゆえなのかそれなりの地位の貴族の令息からデートの誘いが絶えない。
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