黒眼帯の氷結辺境伯は冷遇された令嬢を一生涯かけて愛したい
(ルード・シャルフ辺境伯。なんて美しい方なのかしら。眼帯をしていらした頃はいつも俯いていて暗く近寄りたいとも思わなかったけれど、両目で見れるようになったのならむしろ手に入れたい!この男、絶対に落としてみせるわ)

 ルシルはルードにとびきりの笑顔を向けたが、ルードはその笑顔を見ても何の反応も示さない。その様子に、ルシルは動揺した。

(ど、どうして無反応なの?どんな男もこの笑顔で落としてきたのに!それにさっきからずっとソフィアの手を握ったままなのも気に食わない。あのクズで小汚いソフィアがこんな素敵なお屋敷で身綺麗な格好をしてシャルフ様に手を握られてるだなんて……!)

「申し訳ないが、貴方に興味はない。ソフィアもお返しするつもりはないのでお引き取りいただけますか」

 静かに、そっけなくそう言うシャルフに、ルシルは目を見開いて驚愕する。そしてソフィアを憎たらしそうに睨んでから父親のエルガンを見た。エルガンはルシルの様子を見て静かに頷き、すぐ口を開いた。

「シャルフ様、それは困ります。ソフィアは国の魔法機関へお渡しする予定なのですよ」
「国の魔法機関へ?」

 エルガンの話にルードは顔を顰めて聞き返し、ソフィアは途端に青ざめる。

(国の魔法機関って?私はまた勝手にどこかへ飛ばされるの?)

「今回の貴方の瞳が治った件で、国の魔法機関が興味を示しまして。ソフィアは元々治癒魔法に特化し上級魔法が扱えます。そんな逸材を放っておくのは勿体無い、ぜひ欲しいと言われまして」

(今までずっと上級の治癒魔法を扱えることを黙っていろと言っていたのに、手のひらを返したようにそんな……!)

 ソフィアは呆然とエルガンを見つめるが、エルガンは気持ちの悪い笑みを浮かべながらソフィアを見返す。

「そういうわけですので、ソフィアは返していただき……」
「断る」

 エルガンの言葉を、食い気味でルードは遮った。

「確かにまだ婚約は済ませていない、だがソフィアは俺にとって大事な人だ。俺の人生にとってずっと必要で、これからも一生涯かけて守り愛したい存在なんだ。そんなソフィアをまるで研究材料かのように扱う魔法機関になぞ渡せない。それに、ソフィア以外の女性と結婚する気もない」

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