黒眼帯の氷結辺境伯は冷遇された令嬢を一生涯かけて愛したい
「初めまして、ソフィア・エルガンと申します」
「はるばるお越しいただき感謝します。早速ですが、(あるじ)を診ていただきたいのです。婚約の話はその後で。それではルード様、失礼します」
「あぁ」

(診ていただきたい?それに婚約の話って?)

 疑問に思い首を傾げるソフィアをよそに、執事は部屋を後にした。部屋にいるのはソフィアと、フードを深く被っているシャルフ辺境伯の二人だけだ。

「ルード・シャルフだ。こうして来ていただけたこと本当に感謝しかない。急がせるようで申し訳ないが、よろしく頼む」

 そう言ってルードはフードを静かに下ろし、右目につけていた黒い眼帯を外した。

(まぁ、なんて綺麗な方なのかしら……!)

 サラサラとなびく少し長めの銀色の髪にオッドアイの瞳、白く滑らかな肌で気品のある顔立ち、見目麗しいという言葉がぴったりだ。

(なんて綺麗な瞳……左目は琥珀色で、右目は……まるでアクアマリンのようだわ!)

 ルードの瞳をしげしげと見つめるソフィアに、思わずルードは片手で右目を覆う。

「よせ!迂闊にみてはダメだと聞いているだろう、君も氷になってしまうぞ。それとも上級の治癒魔法を扱う人間は大丈夫なのか?」
「氷になる?」

 何も知らないソフィアはルードの顔を見てキョトンとし、ルードはその様子を見て驚く。

「ま、まさか君は何も聞かされていないのか?」
「はい、ただこちらに伺うようにと。行けばわかると言われて参りました」

 ソフィアの答えにルードは驚愕し、急いでフードを深く被り直してうなだれた。そんなルードの様子が気になり、ソフィアはルードに近寄った。

「シャルフ様、大丈夫ですか?」
「……!やめろ、近寄るな!」

 パシっとソフィアの手を弾くシャルフに、ソフィアは驚き悲しそうな顔をする。そんなソフィアを見てルードは傷ついたような顔をした。

「すまない……本当に」
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