黒眼帯の氷結辺境伯は冷遇された令嬢を一生涯かけて愛したい

縮まる二人の距離と胸騒ぎ

 ソフィアはルードの家に来てから毎日ルードと食事を共にした。ルードにとってはいつも一人で食べる寂しい食卓だったが、ソフィアがきたことで誰かと共に食事をするという喜びを噛み締めていた。

(ソフィアがいるだけで今まで暗かった食卓が一気に明るくなった。それに誰かとこうして目を合わせて食事をすることがこんなに嬉しいことだったなんて)

 ソフィアはソフィアで、今までずっと侍女が使う台所で食事をしていたため、豪華な食卓に座り豪華な食事をすることに驚きを隠せないでいた。

(私がこんなに素敵な場所で素敵な食事をいただいていいのかしら!?しかも目の前には美しく素敵な辺境伯様……私は夢を見ているのかしら)

「ソフィア?ぼうっとしてどうかしたのか?」
「あっ、すみません。いいえ、あの、こんなに素敵な場所でこんなに素敵な食事ができることにまだ慣れなくて……私には勿体無いほどだと」
「何を言うんだソフィア。君がこうして俺と一緒に食事をしてくれることがどれだけすごいことか。むしろ遠慮することなんてない」

 ルードに前のめりになって言われ、ソフィアは思わずくすくすと笑ってしまった。

(あぁ、そうやって笑う顔もかわいいな)

 ルードにとってソフィアのどんな表情も好感を持てたが、笑顔がルードの胸を一番ときめかせ高鳴らせるのだった。

 じっとルードに見つめられ、ソフィアは何かに気づいて慌て始める。

「申し訳ございません、シャルフ様の前でこんな笑うなど……」
「いいんだ、君の笑顔は可愛くていつまでも見ていたい。それにこれからはシャルフではなくルードと呼んでくれ」

(か、可愛い!?そんなこと初めて言われた、しかもこんな美しい方に……!)

 ドキドキと高鳴る胸に戸惑うソフィアをよそに、ルードはソフィアの顔をじっと見つめる。

「ね、呼んで見てくれないか。俺の名前を」
「……ル、ルード様……?」

 ソフィアに名前を呼ばれたルードは、満足げに微笑んで頷いた。


 
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