罪をきせられ断罪された聖女は愛読書だった恋愛小説のモブキャラに転生して溺愛されることになりました
「はぁ!?私がイリウス様と婚約してる!?」
翌朝、エルレアの声がアディス家の屋敷中に響き渡った。エルレアの様子に、兄のジオルは口をあんぐりさせて驚いている。
「なんでそんなにびっくりしているんだ?お前たちの婚約は三ヶ月も前に決まったことだろう。イリウスから直々に申し込みがあって、今まで二人とも仲良く過ごしていたじゃないか、昨日だってイリウスが来ていたのはお前に会うためだろ」
イリウスとジオルの妹が婚約している。そんなストーリーはどこにもなかった。イリウスと恋仲になるのはメアリだ。なぜ脇役のジオルの妹がイリウスと婚約しているのか。そもそもあの小説にはジオルの妹など存在しない。
「メアリは?メアリはどうしてイリウス様と恋仲ではないのですか?」
「メアリ?誰だそれ?どこかの御令嬢か?」
何を言っているのだこいつは、という顔でジオルはエルレアを見てため息をつく。どういうことだろうか。小説では社交パーティーでイリウスがメアリに一目惚れをし、距離を縮めるうちにメアリの内面にも惹かれ恋に落ちるはずなのだ。
(もしかして社交パーティーでまだ出会っていないとか?次のパーティーはいつ?)
「お兄さま、近々社交パーティーが開かれる予定はありませんか?」
「それなら明日だろ。お前、楽しみにしてたじゃないか。どうかしたのか?昨日からなんかおかしいぞ」
(明日!明日なのね!メアリとイリウス様が出会うのは!)
目を輝かせるエルレアに、ジオルが衝撃の一言を浴びせた。
「そもそもイリウスにお前以外の恋仲の女性がいるわけないだろ。イリウスはお前にゾッコンなんだし」
お前にゾッコン、その言葉はエルレアの脳内にリフレインする。絶句してジオルを凝視するエルレアを、ジオルは本気で心配し始めた。
「お前、本当におかしいぞ?頭でも打ったのか?医者を呼ぶか?」
「い、いえ!大丈夫です!お気になさらず!」
(ダメダメダメダメ、イリウス様と恋仲になって幸せになるのはメアリなのよ。私じゃないわ)
ジオルとの話が終わり部屋に戻ったエルレアは首をブンブンと横に振ってじっと窓の外の青空を見つめる。
死ぬ間際、どこかの令嬢になって愛する人に溺愛されてみたいと確かに願った。だが、憧れでもあるイリウスに自分が溺愛されるのは嬉しいけれど違う。そもそも小説の中のイリウスに憧れたのは、メアリを一途に愛するイリウスだったからだ。メアリを愛するイリウスは幸せそのもので、そんなイリウスの様子を小説で読むたびにエルレアは幸せな気持ちになっていたのだ。
(私なんかがイリウス様の幸せを邪魔してはいけない。イリウス様は主人公のメアリと一緒になってこそ幸せなのだから。明日、二人の仲を取り持ってみせる)
そう思いながらもなぜか胸がズキリと痛む。だがそんな痛みに気づかないフリをして、エルレアは明日の社交パーティーに思いを馳せた。
翌朝、エルレアの声がアディス家の屋敷中に響き渡った。エルレアの様子に、兄のジオルは口をあんぐりさせて驚いている。
「なんでそんなにびっくりしているんだ?お前たちの婚約は三ヶ月も前に決まったことだろう。イリウスから直々に申し込みがあって、今まで二人とも仲良く過ごしていたじゃないか、昨日だってイリウスが来ていたのはお前に会うためだろ」
イリウスとジオルの妹が婚約している。そんなストーリーはどこにもなかった。イリウスと恋仲になるのはメアリだ。なぜ脇役のジオルの妹がイリウスと婚約しているのか。そもそもあの小説にはジオルの妹など存在しない。
「メアリは?メアリはどうしてイリウス様と恋仲ではないのですか?」
「メアリ?誰だそれ?どこかの御令嬢か?」
何を言っているのだこいつは、という顔でジオルはエルレアを見てため息をつく。どういうことだろうか。小説では社交パーティーでイリウスがメアリに一目惚れをし、距離を縮めるうちにメアリの内面にも惹かれ恋に落ちるはずなのだ。
(もしかして社交パーティーでまだ出会っていないとか?次のパーティーはいつ?)
「お兄さま、近々社交パーティーが開かれる予定はありませんか?」
「それなら明日だろ。お前、楽しみにしてたじゃないか。どうかしたのか?昨日からなんかおかしいぞ」
(明日!明日なのね!メアリとイリウス様が出会うのは!)
目を輝かせるエルレアに、ジオルが衝撃の一言を浴びせた。
「そもそもイリウスにお前以外の恋仲の女性がいるわけないだろ。イリウスはお前にゾッコンなんだし」
お前にゾッコン、その言葉はエルレアの脳内にリフレインする。絶句してジオルを凝視するエルレアを、ジオルは本気で心配し始めた。
「お前、本当におかしいぞ?頭でも打ったのか?医者を呼ぶか?」
「い、いえ!大丈夫です!お気になさらず!」
(ダメダメダメダメ、イリウス様と恋仲になって幸せになるのはメアリなのよ。私じゃないわ)
ジオルとの話が終わり部屋に戻ったエルレアは首をブンブンと横に振ってじっと窓の外の青空を見つめる。
死ぬ間際、どこかの令嬢になって愛する人に溺愛されてみたいと確かに願った。だが、憧れでもあるイリウスに自分が溺愛されるのは嬉しいけれど違う。そもそも小説の中のイリウスに憧れたのは、メアリを一途に愛するイリウスだったからだ。メアリを愛するイリウスは幸せそのもので、そんなイリウスの様子を小説で読むたびにエルレアは幸せな気持ちになっていたのだ。
(私なんかがイリウス様の幸せを邪魔してはいけない。イリウス様は主人公のメアリと一緒になってこそ幸せなのだから。明日、二人の仲を取り持ってみせる)
そう思いながらもなぜか胸がズキリと痛む。だがそんな痛みに気づかないフリをして、エルレアは明日の社交パーティーに思いを馳せた。