先輩が私にフキゲンな理由《10月〜大幅修正開始予定》
浅い息を切らした櫻井が春乃の右腕を握りしめるように強く掴む。

「あい、くん…」


「…一旦、戻らねぇか?お前の家族が心配する」


そう言うと、春乃はブンブンと大きく横に顔を振った。


「戻りたくない…」


「……」


「だって、私のせいで死んだのに、みんなの顔を平然と合わせるなんて…っ、出来るわけないよ…」


「桜子……」


「あの場にいるだけでも居心地が悪かった。


みんな私たちのこと“悪くないよ”とか“自分のこと責めなくていいよ”とか言うけど、


本当は逆に決まってる。だって、あの事故は私のよそ見で…」


「……桜子、今ここに先輩いるの知ってる?」


「………え?」


「……先輩、いるんでしょ。出てきてくださいよ。立ち聞きなんて物騒だから。ま、そういう趣味ならいいけどさ」
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