サマータイムラバー

それはきっと運命


 青い空、白い雲、そしてギラギラと輝く太陽に照らされきらめく青い青い海。
 東京から車で四十分のところにある都会の楽園、ここ美浜ホテルのプライベートビーチでは、夏の陽気に煽られて、みんなキャッキャと声を上げてはしゃいでいる。ただ一人を除いて――

「はああああああ……」

 大場凪(おおばなぎ)は、波打ち際で膝を立てて寂しく座り込み、この場にそぐわない辛気臭い顔で、じめーっとしたため息を吐き出した。
 まるで梅雨の雨雲が停滞しているように、凪の周りだけがどんよりとした空気を漂わせている。

 背後から戯れ合うカップルの声が聞こえてきて、凪の心を容赦なく抉ってくる。
「あの人ぼっち?ヤバくない?」なんて、明らかに凪のことを指した失礼な声が耳に入ると、いよいよいっそう自分が惨めに思えてきた。

(やっぱりキャンセルしておけばよかったかなー)

 本当は、一人で行くつもりなんてなかった。一泊二日のこの旅行は、彼氏である周吾と行く予定だったのだから。もっとも、その肩書きには「元」がつくけれど。
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