サマータイムラバー
突然回路がつながったように、意識を取り戻した時には、部屋の中が真っ暗になっていた。
いつの間にか寝ちゃったんだ……と眠気が覚めずに重怠い頭を押さえながら、のろのろと身を起こして窓の向こうに視線をやった。水平線上には僅かに夕焼けの橙が見えるだけで、空も海も宵闇の紺碧に染まっている。
時計の針は、もうすぐ午後七時というところを差していた。
レストランの予約時間が迫っている。一人とはいえ、予約に遅れてしまってはお店に申し訳ない。
凪は大急ぎで身支度を整えると、部屋を飛び出してエレベーターで下に降りた。
予約していたフレンチレストランは一階のロビーを抜けた先にある。
チェックイン時間のピークがとっくに過ぎたロビーは閑散としていた。カウンターにスタッフが一人、それからソファに一人、パソコンを操作している男性客がいるくらいだ。
目についたのは偶然。けれど、男性が俯いた顔を少し上げた瞬間、凪の足が止まった。
(あ、あの人……)
昼間男の子を助けたライフセーバーの彼が、先ほどまで凪の心を占拠していた彼が、そこにいた。
白の半袖シャツにネイビーのスラックスというシンプルでラフな出立ち。長い脚を組んでパソコンに向かう様子はそれだけで様になっている。
水着姿しか見ていなかったから、服を着ているとなんだか別人のように思える。ただ、シャツ越しからでも隆起した筋肉がその存在感を示していて、昼間に見た彼の雄々しい肉体を思い出し、凪の頬に自然と朱がさす。
それに加えて目を引くほどの美しい顔立ちをしているので、ますます目が離せない。食い入るように眺めてしまっていると、彼がふとこちらを見た。
いつの間にか寝ちゃったんだ……と眠気が覚めずに重怠い頭を押さえながら、のろのろと身を起こして窓の向こうに視線をやった。水平線上には僅かに夕焼けの橙が見えるだけで、空も海も宵闇の紺碧に染まっている。
時計の針は、もうすぐ午後七時というところを差していた。
レストランの予約時間が迫っている。一人とはいえ、予約に遅れてしまってはお店に申し訳ない。
凪は大急ぎで身支度を整えると、部屋を飛び出してエレベーターで下に降りた。
予約していたフレンチレストランは一階のロビーを抜けた先にある。
チェックイン時間のピークがとっくに過ぎたロビーは閑散としていた。カウンターにスタッフが一人、それからソファに一人、パソコンを操作している男性客がいるくらいだ。
目についたのは偶然。けれど、男性が俯いた顔を少し上げた瞬間、凪の足が止まった。
(あ、あの人……)
昼間男の子を助けたライフセーバーの彼が、先ほどまで凪の心を占拠していた彼が、そこにいた。
白の半袖シャツにネイビーのスラックスというシンプルでラフな出立ち。長い脚を組んでパソコンに向かう様子はそれだけで様になっている。
水着姿しか見ていなかったから、服を着ているとなんだか別人のように思える。ただ、シャツ越しからでも隆起した筋肉がその存在感を示していて、昼間に見た彼の雄々しい肉体を思い出し、凪の頬に自然と朱がさす。
それに加えて目を引くほどの美しい顔立ちをしているので、ますます目が離せない。食い入るように眺めてしまっていると、彼がふとこちらを見た。