サマータイムラバー
 いくらイケメンでかっこいいとはいえ、旅先で遊ばれてポイっと捨てられるのはゴメンだ。二度も惨めな女に成り下がりたくない。

(食事はついてきちゃったけど、私はそんな気ないんだから)

 そう心に決めてガードを固くしていると、不意に名前を呼ばれて我に返った。

「ドリンクは決めた?」
「ごめんなさい、まだ……」
「じゃあこれを。グラスは二つで。凪は酒飲める?」
「は、はい、普通には……」
「よかった。うまいシャンパン頼んだから楽しみにしてて」

 爽やかな笑みを向けられ、凪の心臓が条件反射的に跳ねてしまう。じわじわと顔に熱が広がっていくのがわかって、凪は目を伏せた。
 おまけにシャンパンが注がれたグラスを掲げて「運命の出会いに乾杯」なんて漣が言うものだから、恥ずかしすぎて顔が上げられない。

 遊ばれるなんて絶対イヤ、と決意した心が早くも挫けそうになる。
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