傷心女子は極上ライフセーバーの蜜愛で甘くとろける

この展開は想定外です

 ナースから簡単な問診を受けた凪は、病院への受診は必要ないと断ってそのままホテルの部屋へ戻り、すぐさま浴室に向かった。

 更衣室で着替えたものの、浜辺の砂は落としきれなかったし、髪も塩水のせいでガビガビだ。
 どこかに心を置き忘れたように、ぼうっとしながらシャワーハンドルを操作する。結果降ってきたのは水だったが、火照った肌を冷ますにはちょうどよかった。

 いまだに鼓動が鳴り止まない。
 真っ黒な、凪を射貫くあの力強い双眸が、頭から離れない。
 顔が、いや、体全体が熱を持っている。

「かっこ、よかったな……」

 思わず本音がこぼれて、凪は信じられない気持ちで自身の唇をそっと撫でた。
 彼氏と別れて三日後に、別の男性にときめくなんて、そんなことありえない……。
 けれど、無意識のうちに紡いだ言葉は何よりも凪の本心だった。

 色々なことが起こりすぎて疲弊しきっていた。凪はシャワーを浴びた後、濡れた髪のままドサリとベッドで横たわり、力尽きるように目を閉じたのだった。
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