傷心女子は極上ライフセーバーの蜜愛で甘くとろける
「えっ、なに?」

 意味がわからず、凪は首を傾げる。
 周吾のいつになく鋭い口調に戸惑ったというのもある。コンビニの店内から漏れる光が逆光になって、周吾の表情は影で隠れてよく見えない。

 頭の先から爪先まで、凪の全身を検分するように眺めた後、周吾はわざとらしくため息をついた。

「その格好、そのメイク。おまえ、俺のことバカにしてんのかよ」
「……そんなわけないでしょ」

 やっぱり要領を得ない周吾の言葉に眉をひそめつつ、凪はコンビニの窓ガラスに映った自分の姿を見た。

 ブラウンのテーパードパンツに、白のボウタイブラウス。今日もクライアント先へ訪問に行ったので、清潔感を重視した営業ルックだ。
 長く伸ばした黒髪は後ろで一つにまとめて、メタルモチーフのポニーフックで留めている。
 
 とはいえ残業終わりな上、今し方坂道を登り終えたばかりなので、まとめていても髪はボサボサだし、メイクも取れかけ。だが、イラつかれるほど酷い格好とも思えない。

 一方的に詰られる覚えはなくて睨み返すと、周吾はイライラを爆発させたように頭を掻きむしりながら舌打ちをした。
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