傷心女子は極上ライフセーバーの蜜愛で甘くとろける
 何も答えられないでいる哀れな凪の胸の内を見透かしたように、漣は眦を下げた。

「ここのホテルのスパはもう行ったか?」
「……ううん」

 このプルメリアホテルはプライベートビーチと屋内外の温水プールに加えて、スパ施設も有している。温泉、岩盤浴、サウナ、それにインフィニティプールもあり、温泉以外のフロアは水着を着用するので男女一緒に楽しめる場所だ。

「じゃあそこに一緒に行こう。俺もまだ、凪とは離れがたい」

 真っ直ぐな言葉が凪の胸を強く打つ。
 与えられた猶予に、凪は大人しく甘えることにした。
 コクン、と小さく頷くと同時に、エレベーターのチャイムが鳴る。凪の宿泊フロアに到着し、エレベーターの扉が開いた。

「必ず来いよ。待ってる」

 エレベーターから降りる寸前、腕を引かれて囁かれたその言葉は、ずっと凪の脳裏にこびりついていた。
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