サマータイムラバー
(というか、もっと!早く!言いなさいよ!!)

 三日前のキャンセルの場合、キャンセルチャージが全額発生するのだ。
 予約したのは凪。キャンセルしたら無駄金が引き落とされるのも、凪のクレジットカードから。そんなの御免だ。

 周吾に請求するという手もあるにはあったが、もう顔も見たくないし声も聞きたくないので真っ先に除外した。

 それに、美浜ホテル自体に行きたかったというのもある。
 ホテルの他にグランピング施設も備えていて、おまけに大規模屋内プールとプライベートビーチ付きという規格外なリゾート複合施設として、この美浜ホテルは大変人気を博しているのだ。
 毎月十日に半年後の月の予約が開放されるというシステムだが、予約は瞬殺。すぐ埋まる。
 半年前にスマホとパソコンとタブレットの三台体制で予約に臨んだのが懐かしい。奇跡的に予約できた時は、思わず悲鳴を上げたほど。

 泊まったらプライベートビーチと屋内プールを往復して二日間目一杯楽しむと意気込んでいたのに……このザマである。

 キャンセルチャージを惜しんで、単身プライベートビーチに繰り出したはいいものの、右を見ても左を見てもカップルやファミリーだらけで、凪の心は早くも折れかけていた。
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