傷心女子は極上ライフセーバーの蜜愛で甘くとろける
「普通、彼氏と会うならちょっとは身綺麗にしてくるもんだろ。おまえ可愛げねーし、良いところって言ったら見た目くらいなんだから、もうちょっと気ィ使えよ」

 そういうあなたも何の変哲もないスーツ姿ですけど……なんて言葉は寸前で呑み込んだ。コンビニを出たり入ったりする客がこぞって凪たちを見ているので。
 公共の場で売られた喧嘩を買うほど、凪は理性を捨てていなかった。

「……なんなの、さっきから喧嘩腰で。そんなにイライラしてるなら帰るね。私も疲れてるから」
「はぁ〜、だからなんでそこで素直に謝らねーんだよ。そうしたら俺だって考え直してやるのに」
「考え直すって、一体なんの話?」

どうして今日の周吾はこうも上から目線なんだろう。なんだか怪しい。
 眉をひそめる凪に向かって、周吾は驕慢な笑みを浮かべて顎を突き出した。

「いやさぁ、俺ってやっぱり尽くしてくれる女が好きなんだよ。三歩下がってついてくるっていうやつ?おまえって真逆だろ?男みたいにガツガツ必死に働いてるとことか、正直引くし。顔は良いから我慢してたけど、そろそろ限界なんだよなぁ。おまえがそういうとこ直すんだったら、これからも付き合ってやってもいいけど、その気ある?」
「えっ……?」

 耳を疑うような内容に凪は目を見開いた。
 顔だけは良い?実は引いてた?直す?
 ずっとそんな風に凪に不満を抱いていたんだろうか。唐突に本音をぶちまけられて、おまけに付き合ってやってもいいだなんて上から目線で吐き捨てられて、凪は愕然とする他ない。

「そんなこと、いきなり言われても……」
「いやいや。俺のこと好きならさ、黙って俺の好みに合わせるくらいしろよ。やっぱりおまえってダメだよな。壊滅的に可愛げない。ったく、由香とは大違いだ」
「……由香って誰?」

 凪がすかさずツッコむと、周吾は「やべっ」と顔を青くした。その反応で色々と察しがつく。
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