傷心女子は極上ライフセーバーの蜜愛で甘くとろける
「あの……お待たせ……」

 更衣室で水着に着替えた凪は、スパ内の待ち合わせ場所であるリラクゼーションスペースへと向かった。

 ブラウンのモダンなソファが中央に置かれた北欧テイストの空間には、グレーのバスローブを羽織った男女が複数、寛いだ様子で談笑している。
 
 ただ彼らの視線は時折壁際に立つ一人の男性に注がれていた。
 白い壁にもたれながら俯き加減で腕を組む漣は、圧倒的なオーラを放っていた。バスローブ越しでもわかる筋骨隆々とした躯体は、この場にいる他の人間とは明らかに一線を画している。
 
 その佇まいに見惚れながら、凪は漣の元へと歩み寄った。

「ごめんね、待った?」

 すると弾かれたように前を向いたワイルドな漆黒の双眸と視線が交差して、凪の心臓が高く跳ね上がる。

「いや、俺も今来たとこ。じゃあ行くか」

 当然のように凪と手を繋いで、漣が歩き出す。

「最初は岩盤浴にでも行くか。酒も入ってるから、いきなりサウナは危ないし」
「そうだね、賛成」
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