傷心女子は極上ライフセーバーの蜜愛で甘くとろける
 バーカウンターのある通路を通り、岩盤浴室へと向かう。
 漣が扉を開けると、爽やかなアロマの香りと共にモワリと温かい空気の塊が凪の体を包み込んだ。

 サウナほどではないにしろ、入った瞬間からもう暑い。薄暗い空間にはブルーの間接照明が幻想的に輝いていた。

 凪は躊躇いがちにバスローブを脱いだ。水着姿になって、床に敷いた岩盤浴用のバスタオルに座った漣の隣に腰を下ろす。
 隣からは火傷しそうなほど熱い視線が注がれていた

「そんなに見ないで……」
 
 凪が身につけているのは、昼間身につけていたものと同じ、カーキのビキニだ。
 ハイネックのシンプルなカットアウトデザインだけれど、背中やショーツのサイドはレースアップになっていて、胸元にはスリットも入っている。そこがかわいいと思って購入したのだけれど、ちょっと大胆すぎたかもしれない。

 ジッとこちらを凝視してくる漣の視線に耐えかねて凪が羞恥で俯くと、腰を強く抱き寄せられた。

「昼間も思ってたけど、最高に似合ってる。誰にも見せたくないくらい」

 吐息が耳殻を掠め、凪の体の中心がキュンと疼いた。

「俺のそばから離れるなよ。昼間みたいにまた変な奴らが寄ってくるから」
「昼間って……もしかして見てたの?」
「ああ。迷子対応がなかったら、すぐにでも駆けつけてやりたかったよ。その時から俺が守りたいって思ってた」

 漣の指が意味ありげに凪の肩を撫でる。
 凪は落ち着かないようにモゾモゾと体を動かした。
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