傷心女子は極上ライフセーバーの蜜愛で甘くとろける
『本っ当に、可愛げのねー女』

 周吾の投げつけられた侮蔑の言葉は、三日前から何度もリフレインしている。
 あれから何度か連絡をしてみたけれど、連絡先をブロックされているのか送ったメッセージは既読すらつかなかった。

(何がいけなかったんだろう……)

 確かに自分は可愛いタイプの女ではないと思う。
 身長は百六十五センチ。女性では長身の部類だ。顔立ちがハッキリしているせいで、小花柄だとかふわふわしたフレアスカートだとか、ガーリーな服装は似合った試しがない。

 新卒から六年間、営業職として現場で揉まれ続けていることもあって、物事はハッキリと述べる性質。
 部長からはたびたび「大場さんって、宝塚の男役っぽいよね」と言われている。凪自身は褒め言葉と受け取っていたけれど、まさかそれも「女らしくない」という意味だったんだろうか。
 
(けど、そんなの、今更じゃない……)

 周吾と付き合い始めたのは四年前。凪はずっと凪のままだった。
 今更、可愛らしいタイプの子が好みだから別れろなんて理不尽以外何物でもない。
 
 そうは思っても、凪の心を覆う薄暗い影は濃くなるばかりで一向に晴れない。

(「由香」ちゃんは、きっと可愛らしいんでしょうね……)

 同時並行で付き合っていたから余計に凪の可愛げのなさが目に余ったんだろうか。
 
 押し寄せるのはそこはかとない敗北感。
 あれだけ詰られたので周吾への愛情はもう微塵も残っていない。けれども女としての自分を全否定されたようで虚しい。
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