傷心女子は極上ライフセーバーの蜜愛で甘くとろける

愛の証明

 そして迎えた翌日。
 十五時きっかりに凪の自宅のインターホンを鳴らしたのは、漣……ではなくスーツ姿の見知らぬ男性だった。

「初めまして、大場凪さんでお間違いないですか?」
「は、はい……」

(誰?)

 てっきり漣本人が来ると思っていたので、拍子抜けだ。凪は呆気に取られながら、目の前の男性を観察する。
 
 休日にも関わらず、彼の装いは隙のないブラックスーツ。クールビズなんて言葉は無縁のようで、折目正しくジャケットを羽織り、ネクタイを締めてシャツのボタンも一番上まできっちり留めている。
 生真面目そうなスクエアメタルフレームの眼鏡は曇り一つない。

 爽やかなスポーツマンらしい風貌の漣とは対照的だ。パッと見た限りでは銀行マンのよう。
 
「私、美坂漣の秘書を務めております夏目新(なつめあらた)と申します。漣の代理でお迎えに参りました」
「はあ……」

 慇懃な礼と共に名刺を手渡され、呆気に取られながらそれを受け取る。そこには「SKリゾート マーケティング戦略本部 夏目新」と書かれていた。会社は同じだし、漣の秘書というのは間違いないらしい。

 だがなぜ、漣ではなく夏目が来たんだろう?いまいち状況を掴めないでいると、夏目が淡々と「それでは行きましょうか」と言ってのける。
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