傷心女子は極上ライフセーバーの蜜愛で甘くとろける
「行くって……どこに?」
「おや、漣から聞いていませんか?プルメリアリゾートにですよ」
「え……?き、聞いてません!そんな、突然言われても困ります!私は行きません!」

 遠出をする準備もできていないし、ましてやホテルだなんて……また漣と一夜を共にするつもりもない。
 焦って首を振る凪に、夏目は首を傾げた。

「必要なものがあればこちらで全て手配をしますから大丈夫ですよ。それにあなたは漣と話をするために、律儀に家で待っていてくださったんでしょう?今更行かないなんて勝手は聞けませんね」

 フッと笑いながら、眼鏡のブリッジを中指で押し上げる夏目が小憎らしい。事実なので何も反論できないところがまた悔しい。

 本当に漣と付き合うつもりがないなら、今日の約束だってすっぽかしてしまえばよかったのだ。
 それなのに、夏目の言う通り凪は律儀に漣を待っていた。
 
 恋愛でもう傷つきたくないと殻に閉じこもろうとしているくせに、完全に漣をシャットアウトできないでいた。凪の心の中には、まだ漣への恋慕がどっしりと居座っているから。

 躊躇う凪を、夏目は問答無用とばかりに連れ出した。あっという間に黒塗りの高級車に乗せられ、凪は再びプルメリアリゾートに足を踏み入れることになった。
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