『後姿のピアニスト』 ~辛くて、切なくて、 でも、明日への希望に満ちていた~ 【新編集版】
 翌週から母の通院が始まりました。
 最初の1か月は毎週でしたが、その後は2週間に一度になりました。
 症状が安定してきたら月1回になるとのことでした。
 
 通院を重ねる度に母の表情に変化が出てきました。
 笑みが出るようになったのです。
 不眠の程度が軽くなっているようでしたし、食べる量も増えてきました。
 料理や後片づけはまだ無理でしたが、家の掃除ができるようになりました。
 通院前と比べると明らかに改善しているように見えました。
 
 先生が親身になって話を聞いてくれるのが嬉しいようでした。
 母の話をひたすら聞いてくれるらしいのです。
 上から目線の説教はまったくなくて、母と同じ目線か下の目線で接してくれるらしいのです。
 いい先生に診てもらうことができて良かったと何度も聞かされました。
 でも、わたしは母の話をきちんと聞くことができませんでした。
 アルバイトの掛け持ちで疲れ切っていたのです。
 学校では居眠りばかりしていたので、教師に注意されることが増えていました。

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