『後姿のピアニスト』 ~辛くて、切なくて、 でも、明日への希望に満ちていた~ 【新編集版】
 夕方近くなって電話がありました。
 暫らく母が話したあと、わたしに替わりました。
 症状を伝えると、睡眠の取り方について質問されました。
 バイトから帰ると疲れ切っているので仮眠を取っていることを伝えました。
 すると、それが原因かもしれないと言われました。
 金縛りは正式には『睡眠麻痺』と呼ばれるものらしいのですが、睡眠の分断によって起こる可能性があるのだそうです。
 ちょっと寝て、少し起きて、また寝るということを繰り返すと起こりやすくなると言われました。
 正にわたしはそういう生活を3か月間続けていました。
 金縛りは癖になることがあるのかと訊いたら、同じ生活習慣を続けていたら二度三度と起こる可能性があると言われました。
 でも、帰宅後の仮眠を止めるわけにはいきません。
 止めたら体が持たないのはわかり切っていましたので、「生活習慣を見直します」と嘘をついて電話を切りました。
 
 その後も時々金縛りに遭いました。
 かなりひどい時もありました。
 パニックになりそうな時もありました。
 でも、重い体をなんとか奮い立たせてバイトを続けました。
 バイトを止めたら生活が破綻するからです。
 母がもう一度働けるようになるまでは頑張らなければいけないと、18歳の若さと体力に頼って踏ん張り続けました。

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