後姿のピアニスト ♪ 新編集版 ♪
 そのあとのことはよく覚えていません。
 気づいたらアヒル座りをしていました。
 包丁は畳の上にありました。
 血は付いていませんでした。
 人殺しはしなかったようです。
 
 立ち上がって玄関へ行くと、スニーカーが片方踏み付けられたようにひしゃげていて、ドアが開きっぱなしになっていました。
 彼が逃げるようにして出て行ったのだろうと思いました。
 すぐにドアを閉めて鍵をかけました。
 
 感じが良くて親切そうで友達になれそうな気がしていたのに、結局は電器店のスケベ爺と一緒でした。
 男なんてみんな一緒だと思いました。
 エッチなことしか考えていないんだと思いました。
 女をセックスの対象としてしか見ていないんだと思いました。
 電車の中で痴漢をするように何をしてもいいと考えているんだと思いました。
 結局みんな一緒なんです、男なんて。

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