後姿のピアニスト ♪ 新編集版 ♪
 外国の有名音響メーカーの一体型CDコンポでした。
 税込み10,500円という値札が付いていました。
 その左横を見ました。
 国産のラジカセが2,100円という価格でわたしを誘っていました。
 右横を見ました。
 3,150円でした。
 左横より新しそうな商品でした。
 外国製に視線を戻して、左横の5倍で、右横の3倍か……、と3つの商品を見比べながら何度も喉の奥で唸っていると、「聴き比べてみませんか?」と若い女性の声が聞こえました。
 見ると、CDを持って微笑んでいました。
 わたしが頷くと、2,100円のラジカセにセットして再生ボタンを押しました。
 予想通りの音でした。
 次に3,150円のラジカセにセットし直して再生ボタンを押しました。
 さっきよりはクリアな音でしたが、値段なりの音だと思いました。
 それから10,500円の外国製にCDをセットしました。
 固唾を飲んで彼女が再生ボタンを押すのを待っていると、イントロが流れてきた瞬間、ノックアウトされてしまいました。
 全然違うのです。
 まったくの別物でした。
 今まで聴いた音はなんだったんだろう、というくらい違いがはっきりしていました。

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