後姿のピアニスト ♪ 新編集版 ♪
「やっぱりいいですよね、これは」
いつの間にか横に若い男性が立っていました。
わたしが頷くと、値札のところの500を右手の人差し指で隠しました。
「丁度でいいですよ」
税金分をオマケしてくれるということだとわかりました。
心の中の声が〈もうひと声〉と叫んでいましたが、それを口に出すことはできませんでした。
今まで値段交渉なんて一度もしたことがなかったからなんとなく憚られたのです。
それに、わたしの気持ちを察して自ら値下げを申し出てくれたのに、それ以上下げてくれとは言えるはずがありませんでした。
返事をする代わりにその商品の両端に触り、大きく頷きました。
若い男性と女性は店員ではなくオーナー夫妻のようでした。
2人の左薬指にリングがあったので間違いないだろうと思いました。
「オープンしてやっと1年なんです」
男性が商品を丁寧に拭きながら笑みを浮かべました。
それは喜びというよりも安堵のような笑いだと何故か思いました。
なんとか1年続けることができた、という意味合いを感じたのです。
「これ、もしよかったらお持ち帰りください」
さっき視聴させてくれたCDをオマケに付けてくれると言われてびっくりしました。
「いいんですか?」
思わずそう言ってしまいましたが、本当は遠慮したほうがいいのだろうなと思いました。
でも手持ちのCDを何も持っていないので、厚意に甘えるしかありませんでした。
「どうぞ、どうぞ」と差し出されたCDを素直に受け取りました。
タイトルは『ピアノで聴くラヴソング』でした。
それを見た瞬間、殺風景な部屋にロマンティックなメロディが流れるのを想像してしまいました。
すると、ほんの少し気持ちが上向いてきました。
いつの間にか横に若い男性が立っていました。
わたしが頷くと、値札のところの500を右手の人差し指で隠しました。
「丁度でいいですよ」
税金分をオマケしてくれるということだとわかりました。
心の中の声が〈もうひと声〉と叫んでいましたが、それを口に出すことはできませんでした。
今まで値段交渉なんて一度もしたことがなかったからなんとなく憚られたのです。
それに、わたしの気持ちを察して自ら値下げを申し出てくれたのに、それ以上下げてくれとは言えるはずがありませんでした。
返事をする代わりにその商品の両端に触り、大きく頷きました。
若い男性と女性は店員ではなくオーナー夫妻のようでした。
2人の左薬指にリングがあったので間違いないだろうと思いました。
「オープンしてやっと1年なんです」
男性が商品を丁寧に拭きながら笑みを浮かべました。
それは喜びというよりも安堵のような笑いだと何故か思いました。
なんとか1年続けることができた、という意味合いを感じたのです。
「これ、もしよかったらお持ち帰りください」
さっき視聴させてくれたCDをオマケに付けてくれると言われてびっくりしました。
「いいんですか?」
思わずそう言ってしまいましたが、本当は遠慮したほうがいいのだろうなと思いました。
でも手持ちのCDを何も持っていないので、厚意に甘えるしかありませんでした。
「どうぞ、どうぞ」と差し出されたCDを素直に受け取りました。
タイトルは『ピアノで聴くラヴソング』でした。
それを見た瞬間、殺風景な部屋にロマンティックなメロディが流れるのを想像してしまいました。
すると、ほんの少し気持ちが上向いてきました。