後姿のピアニスト ~辛くて、切なくて、 でも、明日への希望に満ちていた~ 【新編集版】
 最寄り駅で降りて真っすぐアパートに帰ったが、誰もいない部屋は寒々と冷え切っていた。
 すぐに部屋の明かりを点け、電気ストーブのコンセントを差し、600Wにして手をかざした。
 エアコンはあるのだが、光熱費を節約するために使用を控えている。
 誘惑に負けないようにリモコンは台所の一番上の棚に隠して、椅子に乗らないと取れない高さに仕舞っているのだ。
 
 少し暖かくなってきたので、服を着替えた。
 裏起毛の厚地スウェット上下の上にベンチコートを羽織った。
 野外スポーツ観戦用なのでとても温かい。
 でも足元が寒かったので厚手のハイソックスを2枚重ねて履いた。
 これで万全だ。
 女っぽさは欠片もないが、誰も見ていないからなんの問題もない。
 わたしはわたしだ。

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