後姿のピアニスト ♪ 新編集版 ♪
欲しい、
でも、高い。
高い、
でも、欲しい。
欲望の神と節約の神が頭の中で戦っていると、ご主人がマグカップを持ってきて、「ラジカセと寝袋の具合はいかがですか?」と声をかけてきました。
どう返事しようかと迷っていると、「温かいうちにどうぞ」とコーヒーを勧めてくれたので、素直に受け取ってフーフーして一口含みました。
ミルクたっぷり砂糖多目のコーヒーでした。
食道から胃へ温かな思いやりが流れたような気がしました。
その瞬間、買うしかないと思いました。
でも、すぐには切り出せませんでした。
「温かい寝袋に包まれてラヴソングを毎日聴いています。音は最高に素晴らしいです」と先ほどへの返事をして頷くように頭を下げました。
「それは良かった。安心しました。モノを売るのではなく満足を売りたいと思っていますので、とても嬉しいです」
ご主人はにこやかな笑みを浮かべてから、「ごゆっくり遊んでいってください」と奥さんと同じ言葉を発して店の中に消えていきました。
後姿を見送りながら、押しつけがましさがまったくないオーナー夫妻の対応に涙腺が緩みそうになりました。
でも、高い。
高い、
でも、欲しい。
欲望の神と節約の神が頭の中で戦っていると、ご主人がマグカップを持ってきて、「ラジカセと寝袋の具合はいかがですか?」と声をかけてきました。
どう返事しようかと迷っていると、「温かいうちにどうぞ」とコーヒーを勧めてくれたので、素直に受け取ってフーフーして一口含みました。
ミルクたっぷり砂糖多目のコーヒーでした。
食道から胃へ温かな思いやりが流れたような気がしました。
その瞬間、買うしかないと思いました。
でも、すぐには切り出せませんでした。
「温かい寝袋に包まれてラヴソングを毎日聴いています。音は最高に素晴らしいです」と先ほどへの返事をして頷くように頭を下げました。
「それは良かった。安心しました。モノを売るのではなく満足を売りたいと思っていますので、とても嬉しいです」
ご主人はにこやかな笑みを浮かべてから、「ごゆっくり遊んでいってください」と奥さんと同じ言葉を発して店の中に消えていきました。
後姿を見送りながら、押しつけがましさがまったくないオーナー夫妻の対応に涙腺が緩みそうになりました。