後姿のピアニスト ~辛くて、切なくて、 でも、明日への希望に満ちていた~ 【新編集版】
 台所に行って、小さな鍋に500mlの水を入れて火にかけてから、フライパンでモヤシとキャベツを炒めた。
 鍋の水が沸騰してきたので、即席麺を入れて2分煮た。
 そして、生卵を入れて更に1分煮た。
 そこで火を止めて、添付のミソスープの素を入れて、卵が崩れないように慎重にかき混ぜた。
 大きめの椀にラーメンと卵とつゆを移し、モヤシとキャベツを上に乗せた。
 夕食の完成だ。
 日雇いのような生活をしている女に1食100円以上お金をかける余裕はなかった。
 たまにはおいしいものを食べたいと思うこともあるが、無い袖を振ることはできない。
 それに、貧乏生活にはすっかり慣れたから、野菜と玉子付き味噌ラーメンで十分幸せな気持ちになれる。
 寒い冬に温かいものでお腹がいっぱいになれば、他には何もいらない。
 他人から見たら酷い食事だと思われるかもしれないが、そんなことは関係ない。
 わたしはわたしだ。
 
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