後姿のピアニスト ♪ 新編集版 ♪
 そこからどうやって帰ったのかは覚えていません。
 気づいたら六畳間の椅子に腰かけていました。
 テーブルの上には卒業証書とメモと小さな封筒ともう一つの封筒が置いてありました。
 でもそれがどうしてテーブルの上にあるのかわかりませんでした。
 
 封筒に手を伸ばしました。
 母が最初に来た時にドアポストに入っていた封筒です。
 封も開けずに台所の引き出しに仕舞ったままにしていた封筒です。
 上の部分を破って開けると、中から手紙とお金が出てきました。
 手紙を広げると、母の匂いがしたような気がしました。
 すぐに文字を目で追いかけました。
 
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